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ここは幕末紀行人の目にふととまったものを何気なく紹介するコーナーです。

(毎日新聞2002年8月21日東京朝刊から)

人類最大の発明は何か。「株式会社」という答えはどうだろうか。

「ファイナルアンサー?」といわれると困るけれど(そもそも唯一の正解はないのです)、筋のいい答えに思える。株式会社なくして資本主義の発展はなかった。
金はないけど知恵がある。そういう人が多くの人に資金を募って何か仕事を始める。乱暴にいうと、これが株式会社の原形。司馬遼太郎さんによると、 坂本竜馬亀山社中(後の海援隊)が日本最初の株式会社である。実際に資金を公募したのは1869(明治2)年、渋沢栄一が作った商法会所が最初だ。

前年欧州から帰国した渋沢は商売を盛んにするには「西洋に行われている共力合本法(きょうりょくがっぽんほう)」を採用すべきだと考えた(「雨夜譚(あまよがたり)」岩波文庫)。共力合本法は今の株式会社制度である。商法会所は銀行兼商社のような組織だった。

東京証券取引所の前身、東京株式取引所は1878(明治11)年6月にできた。渋沢の後押しが大きかった。当初、国債の売買が中心だったが、明治20年代以降、株式が主役になる。大阪証券取引所の前身、大阪株式取引所も同年8月に開いた。
その大阪証券取引所が開設したナスダック・ジャパンが消える。ベンチャー企業向けに大々的にスタートしてわずか2年。日本経済の低迷や米国ITバブルが崩壊したことが理由とされる。要するに上場企業が集まらなかった。予想の半分以下。

渋沢の場合、まず「共力合本法」を説明するのが大変だった。130年余が過ぎ、株式会社を知らない人はいない。だが、ふつうの人々には、なぜか株式は今もそれほど身近ではない。証券市場の主役は海外の機関投資家だ。こと日本に関しては残念ながら「株式会社=人類最大の発明」説を取り下げるか。

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